うつ病を経験した女性が体験談を語ってくれました。
うつ病になった当時に勤めていたのは、不眠・不食状態になるほど忙しいIT企業。
激務があたり前だったため、自分が睡眠不足であることも、体重が15kgも減ってしまったことも、カフェイン摂取量が激増していることにも気づかなかったそうです。
会社を辞めて実家に戻ったことで比較的早く回復したそうですが、現在も仕事をセーブしているとのこと。
「うつ病は他人事ではない」ということに気付かされる体験談です。
体験談を投稿してくれた方
体験談を語ってくれた方:Sさん(20代・女性・契約社員)
家族構成:両親、妹
うつ病になった時期:IT企業で正社員で働いていたとき
正社員から契約社員になったのは、うつ病の再発を防止するため
私は過去にうつ病を経験し、現在は完治しています。
いま、私は契約社員として企業で勤めています。
人間関係も良好で、働きやすい環境です。
この職場で働き始めたのは、うつ病で以前勤めていた会社を退職してから、1年が過ぎた頃でした。
正社員ではなく契約社員を選んだのは、うつ病になったときのように、仕事に私生活を壊されてしまいそうな気がしたからです。
上司からは正社員登用も提案してもらっていますが、現時点では契約社員のままでいたいと考えています。
周囲の人には変なこだわりと思われているかもしれませんが、自分にとっては今の環境がちょうどいい。
なぜ正社員を避けるようになったのかというと、過去に患ったうつ病が原因です。
私はあまりに忙しすぎる職場環境に5年間もいたために、うつ病になりました。
ですから今はできるだけ仕事をセーブし、うつ病の再発を防止しています。
IT企業の激務で、ストレスとプレッシャーにさらされる日々
さて、私がうつ病になった当時の話をします。
新卒で採用された会社は実家から離れた東京にありましたので、初めて一人暮らしをすることになりました。
家族仲はとても良かったですが、それぞれ自立していて、どちらかというとドライだったので、一人暮らしをすることに対して「寂しい」だとか、そういった不安はほとんどありませんでした。
採用された会社は、いわゆるIT関連の企業です。
採用前にはわからなかったのですが、入社早々、すごく忙しい環境であることが分かりました。
人間関係はとても良く、新人への教育もしっかりとしてくれたので、そこにストレスを感じることはありませんでした。
ただ、とにかく忙しくて、どれだけ仕事を処理しても次から次へと案件が増え続けていき、徐々にプレッシャーとストレスを感じるようになっていきました。
お昼休みにも、ゆっくりとランチに出かけるような人はほぼいません。
みんなおにぎりやサンドイッチを片手にずっとパソコンの前に座り続けています。
それは、ランチに行ってはいけないような雰囲気があるからではなく、その日に処理しなければならない案件が多すぎて、食事のために時間を取るのがもったいないからでした。
最初のうちはへとへとになり、もう辞めようかなと考えることもありましたが、1年、2年と時間が経つにつれて、「退職」という文字が頭をよぎることもなくなりました。
終電でなんとか帰宅し、早朝には家を出発するため、5年間住んでいたマンションのお隣さんとは2回しか顔を合わせたことがないほど。
たまの休みには、寝不足を解消しようと1日中布団の中で過ごすことも多かったです。
そんな生活を続けていると、会話をする相手は基本的に同僚や上司、取引先の人ばかりで、家族や友人と会話をする機会がほとんどありませんでした。
そのため、自分が今置かれている状況が厳しいものであることには気づけませんでした。
だって、周りもみんな同じ状況だったのですから。
不眠・不食で体重が15kgも減った
入社してから4年が経った頃、わたしの体重は大学時代の頃から比べて15kgも減っていました。
まともに食事をしていないのですから、当然といえば当然ですよね。
そして、それまで大好きだった音楽鑑賞やアーティストのライブ、旅行など、いろんなことへの興味が失われていました。
それに以前の私は恋愛体質で、いつも誰かに恋をしている状態でしたが、異性への興味もこのときばかりは皆無になりました。
(20代半ばでそのような状態になってしまったことは、今振り返ってもやっぱり悲しいです…)
冷静な今なら明らかに異常な状態だとわかるのですが、この時のわたしは全くもって自分の心身に起こっている変化に気づいていませんでした。
そんなある日、中途採用で入社してきた女性社員がわたしの1日の様子を見て、心配そうに声を掛けてきてくれたのです。
その言葉は意外なものでした。
知らない間にカフェイン摂取量が激増
「コーヒー飲み過ぎじゃないですか? 体、大丈夫ですか? 少しは休んでくださいね。何か手伝いますよ。」
この時はじめて自分がコーヒーを飲みすぎているということに気づきました。
言われてみればその時期のわたしは、片時もはなさずコーヒーを飲んでいました。
おそらく1日10杯以上は飲んでいたと思います。
コーヒーがもたらす体への影響については存じ上げませんが、私は自分がそれほどまでにコーヒーを飲んでいることにも気づけなかった。
それがショックでした。
おそらく不眠・不食のような日々が続いたことで、冷静な判断力を失っていたのだと思います。
そして、疲れきった脳にムチを入れるために、自然とカフェインの量が増えていたのでしょう。
私のことを心配してくれたその女性社員が以前に勤めていた会社にも、同じようにコーヒーを大量に飲んでいた同僚がいたそうです。
しかも、その後体を壊してしまい、入院したのだとか。
そんな元同僚を知っていたために、私のことが心配になったそうです。
心療内科で「うつ病」と診断された
このことをきっかけに、わたしは両親にいまの自分の状況を話しました。
両親はわたしの話を聞きつつ、知人の医師に相談をしてくれて、東京まで駆けつけてくれました。
そして両親の付き添いのもと、心療内科へ行ってみることにしたのです。
心療内科の待合室には、いろんな方がいました。
かなり年配の方もいましたし、私よりも若い女性も何人かいて、なぜか少しホッとしました。
診察を受け、自分がうつ病であると診断された時には、信じられない気持ちでした。
うつ病は気持ちがものすごく暗くなり、引きこもってしまうほど症状が重たいものだと思っていましたが、私はそこまでではなかったからです。
でも、心療内科の先生にいくつかの症状を指摘されたときに、いつの間にか思考能力がなくなっていたことに気づきました。
食欲がないこと、疲れているのにぐっすり眠れないこと、カフェイン摂取量が多すぎること。
どれをとっても異常ですよね。
IT企業を退職し、実家で療養を始めた
その後、両親と相談した結果、わたしは会社を辞めました。
同僚に迷惑をかけてしまうとも思いましたが、私の身を心配して涙する両親を見て決断したのです。
それから東京から実家に引っ越し、しばらくの間は通院しながら体を休めました。
ちょっと元気になり始めたところで、妹と一緒にヨガ教室に通ったり、家族旅行に行きました。
今まではできなかったことをやっているうちに、どんどんと体調がよくなり、食事もできるように。
ぐっすり眠れるようにもなり、体重も少しずつ増えていきました。
心配してくれた同僚・家族に感謝
今でも忘れられないのは、引越した日の夕食のことです。
両親や妹と一緒に食事をしながら、こんなに安心できる場所があるんだと心からほっとして、涙がとまりませんでした。
今までがむしゃらに働いてきましたが、体や心が壊れてしまうまで働くことに何の意味があるんだろうと、そのとき思いました。
もしあの時点で対処していなければ、うつ病はもっと深刻なものになっていたでしょう。
もしかすると、取り返しのつかないことになっていたかもしれません。
勇気を出して声をかけてくれたあの女性社員には、感謝してもしきれません。
忙しい職場を辞めようか悩んでいるときは、同僚のことを考えれば考える程、決断しにくいものですよね。
でも、心と体を壊してまで働き続けると、かえって迷惑をかけてしまいます。
(とはいえ、私もほんっっっとに迷いましたが…)
体の不調を感じたときは、まず体を優先して。
うつ病は決して他人事ではありませんので、ストレス解消にも十分に気を配ってください。
わたしもうつ病が再発しないように気をつけます。
まとめ:うつ病になったときは退職するのも選択肢の1つ
Sさん(20代・女性・契約社員)の体験談は、かなりリアルですね。
不眠・不食で働くような環境にいると、体調不良はもちろん、メンタルの不調にもなってしまいそうです。
会社員がうつ病になったとき、まず検討するのは「傷病手当金をもらいながら休職すること」ではないでしょうか。
そうすれば、最低限の生活費を確保しながら体を休められるからです。
傷病手当金については次の記事を参考にしてくださいね。
ちなみにセクハラやパワハラなどが原因でうつ病になったときは、「労災」という選択肢もあります。
ただ、休職することの問題点は、職場復帰した後の「再発」ですよね。
厚生労働省の発表によると、うつ病の再発率は60%もあるそうなので、焦りは禁物。
実際、ぼくの知人には復職を焦ったがゆえに、何度も鬱を再発させている人がいます。
ですから、うつ病をしっかり治すためには「会社を退職する」ことも選択肢の1つ。
生活費の問題はあるにしろ、まずは全ての人間関係やプレッシャーから解放された状態で休養することが大切だからです。
ちなみにうつ病の診断書があれば、3ヶ月の給付制限期間が免除され、すぐに給付金を受け取れます。
「仕事」と「お金」はセットですが、うつ病になったときはぜひ「体」のことも考えてくださいね。
ミラクリから一言
元気になれば、また働ける。