お金が無いというのは切実な悩みです。
ぼくもうつ病で会社を退職してからしばらくの間は、「お金が無い日々」と闘いました。
体の調子が良くなるにつれて、仕事はもちろん、節約の工夫もできるようになりましたが、無収入の時期は不安しかありませんでした。
お金が無いとき、社会的なセーフティーネットを知っているのと、知らないのとでは安心感がずいぶん違うと思います。
今回は、うつ病で働けない人たちにおすすめの支援制度について解説しますね。
うつ病の人が金欠になる理由
うつ病を患うと、経済的な不安が生まれます。
仕事を休んだり、会社を退職する状況に追い込まれるからです。
うつ病の人が金欠になる、いくつかの理由を確認していきましょう。
働くことができなくなる
うつ病を患ったら、会社を休職するか、あるいは退職する人がほとんどだと思います。
ムリをして働くということはできるかもしれませんが、しっかりと治すためには、やはり仕事を休むことが大切。
しかしながら、働けないということは、無収入になるということですよね。
しかも、うつ病は「骨折」のように治療期間が予測できるものではないため、仕事再開の目処をたてにくいことも不安を増大させます。
仕事探しについて悩んでいるなら、以下の記事をご覧ください。
すぐに再就職ができない
うつ病が原因で退職した場合、しばらくの間は治療に専念する場合が多いでしょう。
働くことにはストレスが伴うため、再就職を躊躇すると思います。
お金の心配はあるものの、うつ病の再発率は60%と言われていますので、焦りは禁物です。
長期間の通院・入院により高額な治療費がかかる
うつ病の治療には、ある程度の時間を要します。
うつ症状が軽度であれば半年未満で回復できる可能性もありますが、重度の場合は数年かけても回復しないことがほとんど。
治療のために通院を続けると、1回あたりはそれほど高額ではなくても、長期間に渡って医療費は膨らんでしまいます。
もし入院が必要な場合には、かなり高額な費用が必要となるでしょう。
うつ病の克服には、専門医のアドバイスと治療が必須であるものの、お金がかかるのは否めません。
借金をしてしまう
収入がなくても、支出は毎日のように発生しますよね。
働くことができず、主たる収入源を失うと、あとは借金しかないと考えてしまいがちです。
その場しのぎで金融業者からお金を借りると一時的には安心できますが、返済の義務は必ず残ります。
しかも、金融業者には利子をつけて返済しなくてはならないため、余計に支出を増やすことになります。
返済のプレッシャーがうつ病に影響する可能性もありますので、借金はくれぐれも慎重に。
できることならまずは両親や親族の援助をあたってみてください。
そして、金融機関から借金する前に、公的支援制度もチェックしてみましょう。
経済的不安を解消できる支援制度
日本には、生活に困窮している家庭を支援する制度がいくつも存在します。
対象となるか否かはそれぞれの制度によって異なりますが、経済的不安を取り除いてくれる支援がきっとありますよ。
詳しく見ていきましょう。
有給休暇
うつ病を患いながらも無理して仕事をしているなら、まず有給休暇を活用しましょう。
有給休暇は、労働基準法により労働者に認められている権利です。
労働者に付与される有給休暇の日数は、以下の通り。
- 6ヶ月間継続勤務…10日
- 1年6ヶ月継続勤務…11日
- 2年6ヶ月継続勤務…12日
- 3年6ヶ月継続勤務…14日
- 4年6ヶ月継続勤務…16日
- 5年6ヶ月継続勤務…18日
- 6年6ヶ月継続勤務…20日(最高日数)
同じ会社に長く勤めている、つまり勤続日数が長ければ長いほど、有給休暇が付与される仕組みですね。
現金をもらえる制度ではありませんが、休んでいる間も給与が補償されるますので、うつ病を克服するためにもしっかり活用してください。
参考サイト:労働時間・休日について(厚生労働省)
傷病手当金
傷病手当金は、就労不能状態になった被保険者に対して、生活費を支給してくれる制度のこと。
給料の3分の2が支給されますので、最低限の生活費を確保できます。
しかも傷病手当金は、申請後すぐに受け取れるのがポイント。
ただし、以下のような受給条件を満たしていることが必要です。
1.業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
2.仕事に就くことができないこと
3.連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
4.休業した期間について給与の支払いがないこと引用元:全国健康保険協会
有給休暇で休んだ日数は、「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと」に含まれないのは注意したい点です。
傷病手当金のメリット・デメリット、申請方法などは以下の記事で詳しく解説していますよ。
労災認定
業務内の事由によってうつ病を患った場合は、労災認定を受けることもできます。
労災が認定されれば、傷病手当金よりも多い、給与の約80%のお金を受け取ることができます。
しかし、労災認定は傷病手当金と違い、認定されるまでに半年〜1年程度の時間がかかりますので、その間の経済的不安は残るでしょう。
しかも、うつ病の労災認定率は約40%。
必ずしも認定されると決まっているわけではないのです。
労災を検討するなら、同時に傷病手当金も申請するようにしましょう。
労災が認定されると傷病手当金は返還する必要がありますが、認定を受けるまでのつなぎとして有効活用できるはずです。
うつ病の労災認定について、以下の記事で詳しく解説しています。
失業保険(失業手当)
失業保険は「働く意志のある人」に対してお金を支給する制度です。
うつ病が回復し、再び働きたいという意志があれば、失業保険の受給が可能。
雇用保険の加入期間によって受給期間が変動し、年収によって受給金額も変わります。
また、うつ病の治療中で働けない場合は、支給時期を遅らせる「受給期間の延長」という制度もありますので、ハローワークでよく確認しておきましょう。
失業保険の受け方や受給金額などは、以下の記事で詳しく解説しています。
障害年金
受給条件がかなり厳しくなりますが、障害年金という支援制度もあります。
障害年金とは、重度の精神障害であると認められた人の生活を支援する制度のこと。
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2つあり、それぞれに受給対象者が決まっています。
- 障害基礎年金…国民年金加入者で、障害等級1級または2級に該当する
- 障害厚生年金…厚生年金加入者・共済年金加入者で、障害等級1級〜3級に該当する
いずれも「初めて医師の診療をうけてから1年6ヶ月以上経過していること」が受給条件です。
受給金額は、該当する障害等級や、配偶者・子供の有無によって変動しますので、詳しくは日本年金機構のサイトで確認してください。
参考サイト:障害年金(日本年金機構)
自立支援医療制度
今まさにうつ病治療のために通院している人は、自立支援医療制度を活用できます。
自立支援医療制度とは、健康保険加入者の医療費が従来の3割負担から1割になる制度のこと。
対象になるのは、うつ病を含め、長期間の治療が必要な人です。
なお、次の点には留意してください。
- 入院は対象外
- 保険外治療は対象外
自立支援医療制度の良いところは、医療費の自己負担額が多い人ほどコストダウンになることです。
1ヶ月あたりの医療費に上限があるため、通院回数が多い人ほど医療費を節約できます。
簡単に申し込みできますので、今まさに治療中の人は検討してくださいね。
参考サイト:自立支援医療(厚生労働省)
精神障害者保健福祉手帳
社会生活に支障をきたすレベルの精神疾患があるなら、精神障害者保健福祉手帳を受け取り、支援サービスを受けることができます。
精神障害者保健福祉手帳とは、精神疾患を持つ人に対して、公的機関の費用を割引する仕組みのこと。
手帳を受け取るためには、1級から3級に分けられた精神障害等級と診断されていること、最初の診察を受けてから6ヶ月以上経過していることが条件です。
医療費自体が安くなるわけではありませんが、次のようなサービスを受けられます。
- NHK受信料の減免
- 所得税・住民税・相続税の控除
- 軽自動車税の減免
- 生活福祉資金の貸付(無利子あるいは年1.5%の利子で借り受けできる)
- 鉄道、バス、タクシー等の運賃割引
- 携帯電話料金の割引
申請書は市町村の担当窓口に提出し、各都道府県の精神保健福祉センターで審査が行われます。
詳しくは、以下のサイトをチェックしておきましょう。
参考サイト:精神障害者保健福祉手帳(厚生労働省)
医療費控除
1年間に支払った医療費が高額だった場合は、医療費控除を活用しましょう。
医療費控除とは、一世帯の年間医療費が10万円以上だった場合に、医療費の一部が還付される制度のこと。
医療費とは次のような費用を言います。
- 治療費
- 入院費
- 検査費用
- 医薬品の費用(薬局で購入した市販薬も含む)
- 病院への往復交通費
- 鍼灸師・柔道整復師による施術費
- 松葉杖・義歯などの購入費用
この他にも医療費に含められるものはあります。
また、医療費控除を受けるには確定申告が必要です。
その際に、添付資料として医療費の領収書を提出する必要がありますので、必ず保管しておくようにしましょう。
通院にかかった交通費の領収書がない場合は、日付と金額をメモして、その他の領収書と一緒に保管してくださいね。
詳しくは厚生労働省のサイトでご覧ください。
参考サイト:医療費控除の対象となる医療費(厚生労働省)
高額療養費制度
1ヶ月の医療費には、自己負担の上限額が定められています。
この上限額を越えた場合に、一部を払い戻してもらえる高額療養費制度を受けることができます。
対象になるのは、健康保険あるいは国民健康保険などの被保険者。
自己負担の上限額は、所得や年齢によって異なります。
たとえば70歳未満で年収400万円の場合、100万円の医療費の自己負担は30万円に。
ここで高額療養制度を活用すると、高額療養費として212,570円が支給され、実際の自己負担は87,430円となります。
申請については、高額療養費の支給申請書を加入している公的医療保険宛に提出すればOKです。
参考サイト:高額療養費制度(厚生労働省)
求職者支援制度
働く意欲があり、仕事を探している場合には、職業訓練を無料で受けることができる求職者支援制度の活用もおすすめです。
要件を満たす人には、職業訓練受講給付金として月額10万円が支給されますよ。
対象者は以下の通り。
【支援要件(特定求職者)】
1.ハローワークに休職の申込をしていること
2.雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
3.労働の意志と能力があること
4.職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと
引用元:職業訓練受講給付金(厚生労働省)
支給要件は以下の通り。
【支給要件】
1.本人収入が月8万円以下
2.世帯全体の収入が月25万円以下
3.世帯全体の金融資産が300万円以下
4.現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
5.全ての訓練実施日に出席している
6.世帯の中に同時にこの給付金を受給して訓練を受けている人がいない
7.過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない
引用元:職業訓練受講給付金(厚生労働省)
要件がとても細かいですね。
該当する場合はハローワーで求職者支援制度の申し込みをしましょう。
失業保険を受けている期間は対象外となりますが、その間に再就職できなかった場合は支給対象要件を満たしますので、有効活用してください。
参考サイト:職業訓練受講給付金(厚生労働省)
生活保護
貯金なし、資産なし、働くこともできない、家族や親族からお金を借りることもできない……など。
もはや八方塞がりの状況で生活に困窮しているなら、生活保護の活用も選択肢の1つです。
生活保護を受給するには厳しい条件を満たす必要があり、地域によっては申請が通りにくいことも。
生活保護は確実に受給できるものではありませんので、ありとあらゆる手段を使ったあとの最後の手段と考えておきましょう。
また、保護費として支給される金額は、厚生労働大臣が定める基準によって計算された最低生活費から収入を差し引いた差額となります。
主には、日常生活に必要な食費や光熱費、家賃、医療・介護サービス費用などの実費額が支給されます。
詳しくは厚生労働省のサイトでチェックしてくださいね。
参考サイト:生活保護制度(厚生労働省)
支援制度を活用して、まずは治療に専念することが大切
さまざまな支援制度を活用すれば、うつ病で療養している期間の経済的不安が少しは軽減されます。
経済的不安が解消されたら、まず治療に専念すること。
職場復帰を焦っては、また鬱が再発する可能性がありますので、時間をかけて治療してくださいね。
元気に働くことができれば、家計はうまく回りだしますから。
本当に金欠のときは、家にある不用品を売りましょう。
ミラクリから一言
セーフティーネットがあれば、少しばかり安心できます。