ぼくは以前、残業が月200時間、休みは月1日という過酷な会社で働いていました。
その会社の人たちはいい人ばかりでしたし、パワハラなどもありませんでしたが、労働条件だけを見ればいわゆる「ブラック企業」ですね。
月200時間も残業をすると、心身にいろんな変化が現れます。
とくに顕著なのは、あまりの疲労で思考能力が低下し、一種の洗脳状態に陥ることでした。
過労による自殺や労災も社会問題になっていますので、自分の身は自分で守ることが大切です。
今回は、残業200時間の恐ろしさを中心に、長時間労働について考えていきたいと思います。
残業月200時間・休日1回の企業で働いた経験
ぼくは今までいくつかの中小企業で働いてきました。
どの会社も人手が十分ではなく、それなりに忙しい日々でした。
その中でもとくにキツかったのは、残業が月200時間、休日は月1回という会社です。
その会社の主な特徴をまとめてみました。
- 業種:製造業
- 職種:製造部門
- 残業:月200時間
- 休日:月1日
- 連続勤務(最高):20連勤
ず〜〜っと働き詰めなのは、本当に辛い体験でした。
「疲れる」という次元を通り越して、「わけがわからない」という感じでしょうか。
残業が月200時間まではいかなくとも、100時間前後の人はザラにいるでしょうから、くれぐれも体調管理には気をつけて欲しいです。
残業200時間の世界で実感した過労の恐ろしさ
残業200時間の世界には、言葉にできない恐ろしさがあります。
とはいえ何とか言葉にしなければ、この恐ろしさを伝えることができないので、当時を振り返ってみたいと思います。
思考能力が低下する
月200時間も残業し、休みがほとんどない状態になると、思考能力が低下します。
その原因は、疲労、睡眠不足、不規則な食事の3つですね。
事件の容疑者を自白させるとき、1番効果的なのは「食事と睡眠を奪い、洗脳状態にすること」だそうです。
そう考えると、ブラック企業の労働環境にも似たところがあると思います。
思考能力が低下し、記憶力や判断力が無くなる。
Amazonのジェフ・ベゾス氏、スターバックスのハワード・シュルツ氏など、世界的に有名なCEOが1日あたり8時間の睡眠時間を確保するのは、思考能力を正常に保つためなのでしょうね。
睡眠時間がどうしても確保できないなら、睡眠の質を高めることを考えてください。
「定時内に仕事を終える」という発想が無くなる
残業が常態化すると、そもそも「定時内に仕事を終える」という発想がなくなります。
つまり始業の時点で残業が確定しているという、おかしな状態ですね。
ですが、その異常さに気づく人は誰もおらず、「今日はなんとか終電に乗ろうな(笑)」といった会話をするのです。
毎日のように終電間際まで働いたり、ときには会社に泊まったりする状況は明らかに異常ですよね。
疲労で作業効率(生産性)が下がる
疲労が溜まると、作業効率(生産性)が下がります。
本来は1時間で終わる仕事に3時間かかったり、30分のミーティングが1時間になったり。
生産性が落ちたことで超過した時間は、そのまま残業にまわされます。
ときには本来のテーマとは関係ない愚痴や不平不満で盛り上がり、会議が延長されることもありました。
サービス残業があたり前になる
いわゆる「サービス残業」に違和感を覚えなくなります。
本来であれば、会社は厚生労働省が定める時間外労働の規定に従い、報酬を支払う必要があります。
でも、実際のところは「残業代は月30時間まで」と決められていたり、「みなし残業が月給に含まれている」と言われたり、ひどい場合は「残業代は払わない」と宣告されたり。
会社のため、売上のため、部署の目標のため。
その熱意は素晴らしいのですが、労働への対価はもらう権利があるはずです。
身体は疲れているのに頭が冴えてしまい、不眠になる
終電まで働いていたり、深夜まで働いてタクシーで帰宅するような状況になると、睡眠障害になります。
身体は疲れているのに、なぜか頭が冴えてしまい、不眠になるのです。
興奮を促す交感神経がいつまでも活発で、リラックスするための副交感神経が働かない「自律神経失調症」のような状態ですね。
睡眠の質が下がる、または短時間睡眠になると、また思考能力が低下するという悪循環です。
「休むこと」に罪悪感を覚える
休む暇もないくらい働いていると、休むことに罪悪感を覚えるようになります。
ぼくはようやく月1回の休みを迎えたとき、心の底から「同僚たちに申し訳ない」と思っていました。
毎月1回だけの休息なのに、罪悪感を持つなんて異常ですよね。
「みんながたくさん残業している → 残業するのがあたり前 → 休むのは甘え」
そんな恐ろしい常識が頭の中で形成されるのです。
サービス残業は「違法」です
まず基本的なところですが、サービス残業は違法です。
労働基準法37条には、「法定労働時間を超えた労働、法定休日における労働および深夜労働が現実になされた場合、割増賃金を支払わなくてはならない」と明記されているからです。
また、労働基準法37条を守らない場合は、労働基準法違反で「懲役6ヶ月以下又は30万円以下の罰金」が課せられる可能性もある。
ですが、実際のところは労働局の監査が追いつかず、悪質な企業が野放しになっているのが現状ですね。
サービス残業が状態化しているなら、従業員が声をあげていいんですよ、「おかしいじゃないですか!」って。
時間外労働の限度と報酬は労働基準法で定められている
サービス残業が違法であることを説明しましたが、実は時間外労働の限度と報酬も定められていることをご存知ですか?
労働基準法で定められている内容は、以下の通りです。
*時間外労働の限度
- 1週間:15時間
- 2週間:27時間
- 4週間:43時間
- 1ヶ月:45時間
- 2ヶ月:81時間
- 3ヶ月:120時間
- 1年間:360時間
*割増賃金の規定
- 時間外労働の割増賃金:通常の2割5分以上
- 月60時間を超える時間外労働の割増賃金:通常の5割以上
- 休日労働の割増賃金:通常の3割5分以上
引用元:厚生労働省
基準が決まっているにも関わらず、「サービス残業」「ブラック企業」という言葉をよく聞くのはおかしいですよね。
企業の監督責任は、今後さらに厳しく追求されるでしょう。
過労による自殺が労災・賠償認定されるケースもある
ブラック企業の規制は年々厳しくなっているように思えますが、実際はまだまだ過労による悲しい事件が頻発しています。
人の命を失わなければ企業風土が是正されないのは、かなり怖いですよね。
以下のように、自ら命を絶った後に労災認定されたり、賠償請求が行われるケースもあります。
- 2015年:電通の新入社員が過労自殺(労災認定)
- 2016年:関西電力高浜原発の課長の過労自殺(労災認定)
- 2016年:ファミリーマート従業員の過労死(和解金4,300万円)
上記で過労働と見なされた残業時間は、月100時間〜200時間。
過労に加えて、重い責任、プレッシャー、パワハラなどが重なっているようです。
この事件は決して他人事ではありませんので、教訓として胸に刻んでおきましょう。
たくさん働くことのメリット
過労や鬱にならなければ、たくさん働くのは悪いことばかりではありません。
一緒に働くメンバーと仲が良かったり、みんなが1つの目標に向かっている場合は、時間を忘れるようにして働けますからね。
たくさん仕事をすることには、次のようなメリットがあります。
- ストレス耐性が身につく
- 結果を出すための根気と忍耐が身につく
- ハードワークに対するアレルギーが無くなる
- 短期間でスキルと経験が得られる
長時間労働をすれば良いというわけではなく、生産性と質が大切であることは言うまでもありません。
体を壊さないレベルであれば、ハードワークの環境を経験しておくのも良いと思いますよ。
ストレス耐性や根気といった精神面は、意外と大切ですからね。
残業が多い会社は「社内恋愛」が多い?
たくさん働くことには、意外なメリットもあるようです。
実は残業が多い会社は「社内恋愛」も多いそうです。
ぼくの経験で考えても、たしかにハードワークで有名な会社は、社内恋愛や社内結婚が多かったように思います。
人材会社のエン・ジャパンが社内恋愛の多い会社をランキングにしていました。
- 1位:株式会社サイバーエージェント
- 2位:エン・ジャパン株式会社
- 2位:株式会社リクルートキャリア
- 4位:株式会社ワークスアプリケーションズ
- 4位:株式会社リクルートコミュニケーションズ
- 6位:株式会社エイチ・アイ・エス
引用元:エン・ジャパン
いずれもIT系、人材系、通信系、旅行系といったハードワークで有名な業界に属していますよね。
もちろん社内恋愛は二次的なメリットですから、恋愛目的で就職するのはお勧めしません。
うつ病になるような働き方を避ける方法
長時間労働で体を壊したり、精神が不調になるのは絶対に避けたいですよね。
ぼくは2013年にうつ病を経験していますが、いま思えばもう少しうまく仕事をコントロールすべきだったと反省しています。
うつ病になる、または自らの命を絶つまで働いたって悲しさしか残りませんから、まずは健康を大切に。
もし長時間労働の会社に就職(転職)してしまったときは、2つのことを実践してください。
まずは仕事の生産性を上げること
まずは仕事の生産性を上げることが大切です。
自らの仕事の手を早めることも重要ですが、チーム全体の効率を上げることはもっと重要です。
仕事の生産性を上げるためには、以下のような取り組みが効果的ですよ。
- リアルタイムで情報共有する
- 朝礼で終業時間を決めてしまう
- あえてノー残業デーを作る
- 不要な業務・無駄な会議を徹底的に削減する
- やらなくていいことを決める
- 残業を申告性にする
- 早朝に出社して重要な仕事を終らせる
- 毎月の残業時間をチェックして、残業を減らす方法を話し合い、実行する(PDCA)
ただでさえ残業が多いのに、「朝礼で終業時間を決めてしまう」とか、「あえてノー残業デーを作る」なんてばからしいと思うかもしれませんが、ぼくの経験上、この2つは重要です。
あえて労働時間を短縮したり、終業時間のデッドライン(期限)を決めると、集中力が高まるからです。
そして、デッドラインへの意識が高まれば高まるほど、「削減できる仕事はないか?」という視点になるでしょう。
効果がでるまでに2〜3ヶ月はかかりますが、興味のある方はぜひ実践してみてください。
会社組織の風土が改善されないなら転職すること
個人とチームの生産性を上げると、早く帰宅できる状況になるでしょう。
しかしながら、会社組織というのは「デキる人に仕事が集まる」というジレンマがありますので、また長時間労働に逆戻りする可能性があります。
せっかく生産性を高めたのに、他部署の無駄な仕事を大量に任されたらゲンナリしますよね。
そこでもう一度無駄なものを削減するのが理想ですが、「いや、これは昔からある業務だから止めるな」といった押し問答があると思います。
そんなときは「機能していない仕事を放置する組織に未来はない」と考えて、心身を壊す前に転職してください。
転職サービスを利用して適職を見つけることができれば、気持ちが楽になるかもしれません。
市場価値を無料診断できるMIIDAS(ミーダス)や、有名なリクナビNEXTなら、すぐに活動を始められます。
また、転職先をじっくり探したいなら、転職のスペシャリストがキャリアアップを手伝ってくれるレバテックキャリアも便利です。
転職は「逃げ」ではありません。
心身ともに健康でいられる環境で働きましょう!
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