「新入社員との付き合い方」については、いつも悩みますよね。
先輩社員は、自分がしてもらった教育をそのまま新入社員にも当てはめがちですが、若者の意識は時代とともに変わります。
とくにインターネットやスマートフォンが普及してからというもの、若者たちの意識の変化は加速しています。
それに対して先輩の考え方が時代錯誤のままなら、新入社員はすぐに離職してしまうでしょう。
ここはひとまず「最近の若者は…」などという偏見は捨てて、イマドキの新入社員に合った対応を見つけてください。
今回はイマドキの新入社員の実態を紹介しつつ、新卒との付き合い方を考えていきます。
イマドキの新入社員の実態
新入社員について考えるときは、「最近の若者は…」という偏見がどうしても入りますよね。
イマドキの新卒たちの特徴を理解するために、まずは「公益財団法人日本生産性本部」と「厚生労働省」の調査データを見てみましょう。
仕事を通じてかなえたい夢がある人は約65%
公益財団法人日本生産性本部が約2,000人の新入社員を対象に行った調査に、おもしろいデータがありました。
「自分には仕事を通じてかなえたい夢がある」と回答した新入社員は、次のような割合になるようです。
- 2011年:男性70.5%、女性73.4%
- 2012年:男性71.1%、女性68.5%
- 2013年:男性70.7%、女性64.3%
- 2014年:男性65.5%、女性67.4%
- 2015年:男性59.3%、女性57.8%
2011年と2014年に関しては、男性よりも女性のほうが仕事に夢を持っているようですね。
この数字を高いと見るか、低いと見るかは意見がわかれるでしょうが、イマドキの新入社員は高い理想を掲げて入社する人が多いようです。
年齢・経験重視の給与システムを望む人が約40%
次も、同じく公益財団法人日本生産性本部の調査データから。
同じく約2,000人の新入社員にアンケートを取ったところ、「業績や能力よりも、年齢・経験を重視して給与が上がるシステム」を望む人の割合が次のようになったそうです。
- 2011年:41.0%
- 2012年:38.4%
- 2013年:38.3%
- 2014年:44.1%
- 2015年:46.9%
つまり歩合給(実績給)よりも、年功序列型の給与システムを望む人が約40%もいるということですね。
この数字を高いと見るか、低いと見るかは意見がわかれるでしょうが、ぼく個人的には「高い」と感じました。
もちろん歩合給を望む人も約50%いるわけですが、血気盛んな若者の考え方としては、いささか保守的に映ります。
約12万人の人が入社3年以内に会社を辞める
次は、厚生労働省のデータを紹介します。
厚生労働省の調査によると、新卒入社3年以内に会社を辞める人の割合は、次のようになるそうです。
- 平成20年3月卒:133,792人(3年以内の離職率30.0%)
- 平成21年3月卒:123,582人(3年以内の離職率28.8%)
- 平成22年3月卒:113,390人(3年以内の離職率31.0%)
- 平成23年3月卒:122,197人(3年以内の離職率32.4%)
- 平成24年3月卒:128,714人(3年以内の離職率32.3%)
- 平成25年3月卒:131,763人(3年以内の離職率31.9%)
入社3年以内の離職率は、なんと約30%もあるんですね…。
企業側としても、せっかくコストをかけて採用したのに残念だと思います。
ちなみに入社1年以内に退職するのは約50,000人、2年以内の退職者は約90,000人もいるようです。
理想が高く、安定志向なのに、根気に欠ける
ここまでの調査データを紐解くと、イマドキの新入社員の傾向が見えてきました。
ぼくの独断と偏見でまとめると、最近の新入社員は「理想が高く、安定志向なのに、根気に欠ける」といったところでしょうか。
もちろん真逆の回答をした人もいるわけですから、あくまでも傾向です。
理想が高いのに安定志向とか、安定志向なのに根気がないとか、相反する要素を持っているのが特徴ですね。
3ヶ月以内に退職してしまう新入社員の特徴
厚生労働省のデータによると、新卒入社1年以内に退職する人が50,000人以上もいるそうです。
しかも早ければ3ヶ月以内に退職してしまう人もいるのだとか。
4月に入社して、5月に五月病になり、6月〜7月には会社を去る。
そんな新卒社員には、どのような特徴があるのでしょうか?
会社組織に適応できない
会社組織に適応できない場合は、会社を辞めてしまうのも仕方がないですよね。
そもそも集団に適応する資質が欠如しているケースや、単純にその会社になじめなかったというケースが考えられます。
同じ会社で長く働けば環境には適応できるものですが、早めに見切りをつける人もいるでしょう。
チームプレーに慣れていない
チームで進めていく仕事に適応できない人もいます。
たとえば体育会系の人は集団行動に慣れていますが、社会人になって初めてチームプレーを学ぶ人もいますよね。
自己犠牲の精神、協力しあう姿勢、理不尽さに耐えるメンタリティー。
チームプレーに必要なこれらの要素にはストレスがつきものですから、耐えられない人もいるでしょう。
下積み・奉仕はお断り
3ヶ月で会社を辞めてしまう人には、下積みや奉仕を容認できないという特性もあります。
たとえば入社から1年間は安月給で我慢するとか、サービス残業をするのはあり得ないというスタンスですね。
もちろん労働者が報酬を要求するのは当然の権利です。
ですが、「定時で帰れないなら、残業代をもらいますよ?」という率直すぎるスタンスは、周囲との摩擦を生むでしょう。
理想とプライドだけが高い(意識高い系)
理想とプライドだけが高く、雑務に我慢できないという特徴も考えられます。
いわゆる「意識高い系」ですね。
目の前の基本的な仕事が将来の結果につながるのに、「今すぐ華やかな仕事がしたい」と焦ってしまう。
そんな誤った上昇志向によって、理想と現実のギャップに苦しみ、「この会社は自分を生かしてくれない」などと言って退職する。
このような人は意識高い系ではなく、「意識だけ高い系」と言ったほうが良いのかもしれません。
ちなみにインターネット上では、自分のことを集団に適応できない「社会不適合者」という人も増えているようです。
先輩が驚く、新卒社員たちのトンデモ行動
「ゆとり世代は一般常識を知らない…」
「これだからさとり世代は…」
社会人経験を積んだ大人たちから、そんな声が聞かれるようになりました。
どうやら最近の新卒社員のなかには、先輩社員がびっくりする「トンデモ行動」をする人もいるようです。
トンデモ行動とは、次のような一般常識からかけ離れた行動です。
- 上司にタメ口で話しかける
- 先輩をあだ名で呼ぶ
- 遅刻してきたのに逆ギレ
- 「誕生日」などの理由で会社を休む
- 仕事場に彼氏(彼女)を連れてくる
- 入社初日に母親を連れてくる
- 「褒められて伸びるタイプ」だと公言する
- 飲み会、会社のイベント、慰安旅行には参加しない
- 「副業があるので残業できません」と同僚にいう
- 「帰れ!」と怒ったら本当に帰宅する
一般常識は時代とともに変わりますが、それでも上記はあきらかにビジネスマナー違反ですよね。
学校が教えてくれなかったとしても、ある程度の一般常識は自分で学んでおきたいところです。
最近の若手が仕事に冷めているのは、会社に居場所を見出だせないから
ぼくが思うに、イマドキの若手社員が仕事に対してドライで、同僚たちにも一線を引いているのは、会社に居場所を見出だせないからだと思います。
会社は第二の家であり、同僚たちは家族であるという考え方は、もう通用しないんですよね。
あくまでも極論ですが、「会社に雇っていただいている」という考え方と、「会社に労働力を売っている」という考え方の違いです。
前者ならときには丁稚奉公をしてでも会社に尽くそうと考えますが、後者なら決められた範囲のことをすればOKになるでしょう。
管理職や先輩は、若手社員に帰属意識をもたせることが重要
管理職の人や後輩を教育する立場にある人は、新卒社員に帰属意識をもたせることが重要です。
帰属意識とは、その集団の一員であるという意識のこと。
新卒社員に帰属意識をもたせるには、古い考え方を押し付けず、若手のモチベーションを高める方法を身につけていきましょう。
イマドキの若手社員に言ってはいけないNGワード
イマドキの若手社員のやる気を引き出すためには、古い価値観を強引に押し付けてはいけません。
先輩社員が言いがちな、次のようなNGワードに気をつけてください。
- 世の中とはそういうものだ
- それが社会人としての常識だ
- 若手のうちは下積みするのが当然だ
- 理不尽さに耐えるのも仕事だ
- 俺が若いときはもっと大変だった
- そんなことは自分で考えろ
昔ながらの上下関係なら、詳しく説明せずとも、簡潔なキーワードだけで真意が伝わったかもしれません。
しかしながら、「ゆとり世代」や「さとり世代」といわれる若者たちは、そこに明確な説明を求めます。
とくに根拠のない押し付けをしようものなら、すぐに無能の烙印を押されてしまうでしょう。
新入社員との付き合い方
それでは最後に、イマドキの新入社員との付き合い方を紹介しますね。
若手が望む方法でコミュニケーションを取る
まずは若手が望む方法でコミュニケーションを取ることが大切です。
以前までなら、「上司にメールで連絡するなんてマナー違反だ」と言われましたが、若い世代にとっては文字でのコミュニケーションは必須です。
メールやLINEを使い分け、必要に応じてSNSも使っていきましょう。
また、文字でのコミュニケーションを好む人とは対照的に、もっと密接な関係を望む若手もいます。
そのような人は一対一の飲み会(サシ飲み)を好みますので、機会を見つけて誘ってみましょう。
雑に扱わない
イマドキの若手にとって、先輩から雑に扱われることはストレスでしかありません。
入社したてであっても、1人の戦力として認めてほしいのです。
仕事を覚えさせるために雑用をさせたり、御用聞きのような仕事ばかりさせていたら、早いうちに嫌気がさすでしょう。
ガラスのハートを持つ若手社員は丁寧に扱ってください。
仕事の「仕組み」から教えて、楽しさに気づかせる
これから担当する業務のやり方だけを教えるのではなく、仕事の仕組みから教えることも大切です。
自分たちの会社は、どこから注文を受けて、どこに納品するのか。
生産に必要な原材料はどこから仕入れ、年間いくら購入しているのか。
何日に請求書を締めて、いつ入金が行われるのか。
会社が行っている業務の流れをすべて説明し、その次に担当業務のやり方を教えてください。
これから担当する仕事だけを説明された新入社員は、自分のことを「組織の歯車」だと感じてしまいますが、仕事の仕組みから教えてもらえたら働く意義を見出だせるでしょう。
仕事を頼むときは「ゴール」を明確にする
新入社員に仕事を頼むときは、ゴールを明確にしましょう。
何日後までに提出して欲しいのか。
どれくらいのクオリティーに仕上げてほしいのか、その期待を明確に伝えるのです。
これは世代を問わず、ゴールの見えない仕事に全力を尽くせる人材は稀ですから、必ず終着点を伝えてください。
そうすることで、新入社員は先輩から求められているものや期待を実感できます。
共存さえできれば、世代間で共感する必要はない
思い返してみれば、自分たちにも「最近の若者は…」と言われた時代がありましたよね。
ぼくはそう言われるたびに「うるせ〜な」と思っていましたが、イマドキの若手はもっと大人です。
年長者たちに追いつけ追い越せをするよりも、あくまでも自分たちの人生を楽しもうとしています。
そんな若者の特性を理解し、決して価値観を押し付けないでください。
若手が一般常識からかけ離れた行動を取ったときも、「ほぇぇぇ〜面白いな」くらいに考えてください。
共存さえできれば、世代間で共感する必要はないのですから。
ミラクリから一言
新入社員にも、新入社員の考え方がある。