「月100時間の残業」
そう聞いて驚くでしょうか? それとも大したことがないと思うでしょうか。
ぼくも月200時間残業をしていた会社員時代であれば驚かないでしょうが、独立してしばらく経った今ではその異常さがわかります。
1ヶ月あたり22日出勤で計算すると、1日あたりの残業時間は4.5時間程度ですからね。
しかも厚生労働省が定める「過労死ライン(月80時間)」も軽くオーバーしています。
長時間残業を強いる、または残業代を支払わないといった悪質な企業が野放しにされているのが現状ですが、自分の身は自分で守っていきましょう。
今回は「月100時間残業」の実態や、厚生労働省が定める基準などを紹介していきますね。
「月100時間残業」で驚かない社会
「月100時間残業」と聞いて驚くでしょうか?
もし驚かないとしたら、過酷な労働環境に身を置いているのでしょう。
かつてのぼくもそうでした。
会社員時代は100時間残業はおろか、200時間残業+休日は月1回という劣悪な環境で働いたからです。
しかしながら生産性を極限まで追求する企業が増えている今、過酷な労働環境は珍しいものではなくなりつつあります。
新入社員がパワハラと過労で自殺し、2016年に労災が成立した「電通」の現役社員は、以下のように述べていたようです。
「私たちが、世間の常識からずれていることは、認識しています。部署にもよりますが、100時間を超えている人はほかにもいるので、そんなに驚く数字ではありません」
(中略)
「従業員7000人の中で、2000人が高橋さんと似た状況にいると思います」
引用元:BuzzFeed
広告業界と言えば、ハードワークで知られる業界ですよね。
まさに昼夜を問わずに働いているため、オフィスビルはいつも電気がついているようです。
業界的には月100時間残業が珍しくなかったとしても、一般的にはやはり過酷な環境だと言えるでしょう。
実は厚生労働省が定める「過労死ライン」は月80時間残業
厚生労働省が定める「過労死ライン」をご存知ですか?
過労死ラインとは、肉体的・精神的に健康でいるために定められた残業時間の目安のことです。
厚生労働省は、過労死ラインを月80時間に定めています。
過労自殺問題を受け、2016年12月に100時間から80時間に変更
この過労死ラインは、もともと月100時間でしたが、2016年12月に変更されました。
おそらく2016年に社会問題化した、ファミリーマートの従業員、関西電力高浜原発の課長、電通の新入社員などの過労死も影響しているのでしょう。
セーフティーラインをかなり手前に設定することは、労働者の健康にとって大切だと思います。
サービス残業は違法・残業の限度と割増賃金も規定されている
厚生労働省が定める労働基準法は、労働者の権利を守り、心身を健康に保つための法律です。
その労働基準法では、実は残業時間の限度と割増運賃が以下のように規定されています。
*時間外労働の限度
- 1週間:15時間
- 2週間:27時間
- 4週間:43時間
- 1ヶ月:45時間
- 2ヶ月:81時間
- 3ヶ月:120時間
- 1年間:360時間
*割増賃金の規定
- 時間外労働の割増賃金:通常の2割5分以上
- 月60時間を超える時間外労働の割増賃金:通常の5割以上
- 休日労働の割増賃金:通常の3割5分以上
引用元:厚生労働省
1ヶ月あたりの残業の限度は、なんと45時間。
実は過労死ラインの80時間よりもずっと少ないんですよね。
しかも労働基準法37条には、「法定労働時間を超えた労働、法定休日における労働および深夜労働が現実になされた場合、割増賃金を支払わなくてはならない」と明記されています。
つまり「サービス残業」「残業代の未払い」については全て違法。
労働基準法違反には、「懲役6ヶ月以下又は30万円以下の罰金」が課せられますが、労働局による規制が追いついていないのが現状です。
労働者みずからが声をあげるしかありません。
「過労死ライン」を超える企業が合計22.7%もある
厚生労働省が10,154社の民間企業および団体を対象に行なった2016年の調査によると、1ヶ月あたりの残業時間は以下のようになるそうです。
*1ヶ月あたりの残業時間
- 100時間超:11.9%
- 80時間超〜100時間以下:10.8%
- 60時間超〜80時間以下:13.3%
- 45時間超〜60時間以下:10.1%
引用元:厚生労働省
なんと合計22.7%もの企業が過労死ラインを超えているんですよね。
これはちょっとびっくりです。
厚生労働省が過労死ラインを定めるのは良いことですが、まだまだ実態は追いついていません。
残業が月100時間を超えるとどうなるのか?
ここで月100時間残業の実態を解説しますね。
ぼくは過去、月100時間〜200時間の残業を経験していました。
その頃の体験をもとに、心身の状態をまとめていきたいと思います。
思考能力が低下する
残業が月100時間を超えると、確実に思考能力が低下します。
考える力が無くなり、発想するための体力もなくなり、記憶力も低下する。
良い仕事ができる状態とはとても言えませんね。
もちろん個人の体力にもよりますが、1日あたり4〜5時間も残業していると、帰宅するのは深夜です。
そのようなライフスタイルで健康でいるほうが難しいのかもしれません。
「定時内に仕事を終える」という発想が無くなる
残業が常態化すると、「定時内に仕事を終える」という発想が無くなります。
いつでも「残業時間こみ」でスケジューリングし、1日の労働時間が12〜14時間あるように錯覚するんですよね。
そんな環境で働くメンバーも、仕事の生産性を上げようとするのではなく、「今日こそは終電に乗ろうな」のようなセリフを笑顔で言い合うようになります。
朝礼の時点で残業が確定していること。
その状態を異常だと思わなくなったときは、第三者に指摘してもらうしかありません。
疲労で作業効率(生産性)が下がる
疲労が溜まってくると、仕事の生産性が下がります。
思考能力も低下しているのですから、当然といえば当然ですよね。
みんながみんな疲弊すると、30分の会議が2時間になったり、書類の提出期限が延期されるようなことが増えます。
そして、生産性の低下によって後ろ倒しになった時間は、そのまま残業にまわされるのです。
不眠になる
疲れすぎると自律神経失調症のような状態になり、不眠になります。
身体は疲れているのに、頭だけは冴えているという状態ですね。
ベッドに入ったのに、仕事のことで不安になったり、怖い上司のことを思い出すのは、まだ脳がフル回転している証拠です。
たとえ眠りに落ちたとしても、ちょっとした物音で起きてしまうでしょう。
睡眠の質を上げることも考えていきましょう。
早く帰ること、休むことに罪悪感を覚える
残業があたり前の会社では、早い時間に帰宅する人を「罪人」のように扱う傾向があります。
つまり早く帰れるのは楽をしているからだ、仕事量が少ないからだと考えているのです。
本当は日中に最大限集中し、早く帰宅できる人のほうが素晴らしいのに、それを認められないんですよね。
過酷な残業をなんとか正当化したくなる気持ちもわかります。
ですが、早く帰ること、休むことは労働者として当然の権利ですよ。
うつ病になる、もしくは体を壊す前に転職すること
過剰な残業は、心身に悪影響をもたらします。
うつ病になる、あるいは体を壊すのも珍しいことではありません。
過労死と認定された方々も、月100〜200時間の残業をしていたようですから。
労働局の監査、または会社組織の改革を待つのではなく、自分の身は自分で守っていきましょう。
まずは仕事の生産性を上げることが先決ですが、いつまでも企業風土が変わらない場合は、体を壊す前に転職してください。
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