今まで勤めていた会社を退職し、再就職するまでに「空白期間」があるときは、生活費が心配ですよね。
とくにうつ病が原因で仕事を辞めているなら、再就職はうつ病を克服してからになると思います。
そんなときは雇用保険から、失業保険(失業手当)を受給する選択肢もありますよ。
今回はうつ病の人が失業保険の概要と、うつ病の人がすぐに受給する方法を解説します。
うつ病で退職したときは失業保険をもらう選択肢も
うつ病で会社を退職した人は、労災か傷病手当金を受給することが多いですが、失業保険をもらう選択肢もありますよ。
もしパワハラやセクハラが原因のうつ病なら「労災」を、連続3日以上仕事を休んだことがある人は「傷病手当金」をもらえます。
最長1年6ヶ月の間、給与の約67%を受け取れる傷病手当金は、うつ病の人にとって最もおすすめの選択肢ですが、条件を満たしていない人は受給することができません。
実は…ぼくがそうでした。
うつ病が発覚してから退職まで、ほぼ休まずに出社していましたので、傷病手当金の受給条件を満たしていなかったんです。
労災を活用する気はそもそも無かったので、失業保険をもらいながら治療し、転職活動もして、早く社会復帰しようと考えました。
傷病手当金・労災との併用はできない
傷病手当金や労災と失業保険を併用することはできません。
どれかの支給を受けているときは、他2つの申請は不可能です。
ただし、治療が長引く場合は、傷病手当金をもらってから失業保険をもらう方法もありますので、詳しくは後述します。
労災と傷病手当金の詳しい解説、以下の記事にて。
不正受給は絶対にやめましょう
本当は求職活動をしていない、または本当は働いているのに所得を申告せず、失業保険を受給するのは「不正受給」にあたります。
不正受給が発覚した場合は、給付金の2倍に相当するお金を返還し、以後失業保険の受給ができなくなりますので注意してくださいね。
それでは失業保険の概要を説明していきます。
失業保険(失業手当)の概要
失業保険とは、雇用保険を支払っている被保険者が、何らかの理由で離職することになったとき、生活費を心配することなく次の仕事を探せるように、最低限のお金を支給する制度のこと。
別名「失業手当」「基本手当」と呼ばれることもあります。
「働く意志のある人」に対してお金を支給する制度なので、就労不能状態のうつ病患者は該当しません。
基本的な受給要件
失業保険を受給できる人は、以下の通りです。
病気やけがのため、すぐには就職できないとき
妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
引用元:ハローワーク
うつ病で会社を退職した人は、「病気やけがのため、すぐには就職できないとき」にあたりますよね。
繰り返しになりますが、働く意志があることも1つの条件になります。
一般受給資格者の受給条件と給付日数
「仕事がいやだ」「新しい業界にチャレンジしたい」など、自己都合で退職した人のことを一般受給資格者と呼び、失業手当を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること。
引用元:ハローワーク
つまり離職前の2年間に、12ヶ月以上雇用保険を支払っていることが条件。
給付日数については、雇用保険の加入期間によって変動します。
- 加入期間1年以上〜5年未満:給付日数90日
- 加入期間5年以上〜10年未満:給付日数90日
- 加入期間10年以上〜20年未満:給付日数120日
- 加入期間20年以上:給付日数150日
おおよそ3ヶ月〜5ヶ月という感じですね。
ちなみにうつ病の人は、次の「特定受給資格者」に該当します。
特定受給資格者の受給条件と給付日数
特定受給資格者とは、会社の倒産や解雇により強制的に退職させられた人、または病気で仕事ができなくなった人が該当します。
鬱の人は、この特定受給資格者として手続きを進めてくださいね。
受給要件は以下の通り。
特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。
引用元:ハローワーク
離職前の1年間に、6ヶ月以上雇用保険を支払っていることが条件ですね。
給付日数は、年齢と雇用保険の加入期間によって前後します。
- 30歳未満:加入期間に応じて90〜180日の給付
- 30〜34歳未満:加入期間に応じて90〜240日の給付
- 35〜44歳未満:加入期間に応じて90〜270日の給付
- 45〜59歳未満:加入期間に応じて90〜330日の給付
- 60〜64歳未満:加入期間に応じて90〜240日の給付
おおよその給付日数は、3ヶ月から11ヶ月という感じですね。
もちろん保険の加入期間によって給付日数は前後しますが、最低限の生活費が確保できるなら、ひとまずは安心です。
就職困難者への給付期間は最大360日
一般受給資格者と特定受給資格者のほかにも、給付に該当する人がいます。
身体障害者、知的障害者、精神障害者、保護観察が付いている人は「就職困難者」とされ、最大360日の失業手当を受け取れます。
- 45歳未満:給付日数300日
- 45〜60歳未満:給付日数360日
では、失業手当はどれぐらいの金額をもらえるのでしょうか?
失業手当(基本手当)の給付金額
1日あたりに支給される失業手当のことを「基本手当」と呼び、その金額は年収に左右されます。
ハローワークに記載されている算出方法は、以下の通り。
離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除きます。)の合計を180で割って算出した金額(これを「賃金日額」といいます。)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)となっており、賃金の低い方ほど高い率となっています。
引用元:ハローワーク
ちょっとわかりにくいので、概算で確認してみましょう。
たとえば月給30万円の場合、6ヶ月分の給料は180万円ですが、これを180で割ると10,000円。
ここからは概算ですが、仮に60%で計算すると1日あたりの基本手当は6,000円、30日分で月給は18万円になります。
実際にどれぐらいの金額を受け取れるのかについては、最寄りのハローワークに問い合わせてみるのが良いでしょう。
また、1日あたりの支給額は上限が決められており、1年ごとに見直しが行われます。
平成28年8月1日に定められた上限は以下の通り。
- 30歳未満:6,370円
- 30歳〜45歳未満:7,075円
- 45歳〜60歳未満:7,775円
- 60歳〜65歳未満:6,687円
では、次に申請に必要なものをチェックしていきましょう。
申請に必要なもの
失業手当の申請に必要なものは以下の通りです。
- 離職票(1)
- 離職票(2)
- 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
- 雇用保険被保険者証
- 普通預金口座の通帳
- 印鑑
- 本人確認証明書(運転免許証、パスポート、住民票など)
離職票は会社に用意してもらうものですから、退職前に人事の担当者に依頼しておきましょう。
ぼくの場合は、退職後に郵送で届けてもらいましたよ。
次はうつ病の人が失業保険をもらうときに、必ず活用したい制度を解説しますね。
一般受給資格者(自己都合退職)は3ヶ月の給付制限期間がある
うつ病で仕事を辞める人の多くは、自己都合退職の「一般受給資格者」に該当すると思います。
ちなみにぼくもそうでした。
困ったことに、一般受給資格者には「3ヶ月の給付制限期間」があるんですよね。
給付制限期間とは、失業保険が給付される前の空白期間のこと。
申請した月から給付制限期間が始まり、終了後に失業保険の給付がスタートしますので、実際の振込みはさらに1ヶ月後。
つまり4ヶ月間の無収入生活を強いられてしまうんです。
何か手立てはあるのでしょうか?
うつ病の診断書を提出すれば給付制限期間が免除される
実はハローワークにうつ病の診断書を提出すれば「特定受給資格者」に分類され、給付制限期間が免除されるんです。
この事実は、ぼくも会社を辞めるまで知りませんでした。
うつ病が原因で退職した人は、この制度をぜひ活用してくださいね。
診断書のもらい方は、以下の記事で解説していますよ。
鬱の治療が長引いたときは傷病手当金 → 失業手当の順番で受給すること
うつ病で会社を辞めた人たちは、失業保険よりも、まず傷病手当金を活用するケースが多いと思います。
2つを同時に受給することはできませんが、組み合わせて活用することは可能ですよ。
傷病手当金の受給期間いっぱいまで治療を続けていた場合は、そこから転職先を探すことになりますので、失業保険の「受給期間延長」を活用してください。
ただし、あくまでも働く意志があることが前提になりますので、その点には注意してくださいね。
失業保険の給付期間は最大4年間まで延長できる
失業保険の給付期間は、最大4年間まで延長できるんです。
手続きさえしておけば、傷病手当金をもらっていた期間のぶんだけ、失業保険の給付期間を延長してもらうことができます。
社会復帰に焦りは禁物ですからね。
退職後31日目から1ヶ月以内に「受給期間延長」の手続きを行うこと
失業保険の延長手続きは、退職後31日目から1ヶ月以内に行ってください。
ハローワークで「受給期間延長」の手続きを自分で行うこともできますし、代理人に依頼することも、郵送での手続きも可能です。
傷病手当金の申請が完了した時点で安心するかもしれませんが、念には念を入れて、失業保険の延長手続きもしておきましょう。
経済的不安を解消しつつ、うつ病を克服していきましょう
失業保険はあくまでも「働く意志がある人」を対象にした制度です。
うつ病で仕事ができる状態になければ受給は不可能ですが、できるだけ早くうつ病を治し、社会復帰したい人には良いかもしれません。
ぼくはまさに失業保険の給付期間が決まっていることが、逆に良い方向に働いたと思います。
給付期間中にうつ病を克服し、また仕事をしたいという決意につながったからです。
療養中の経済的不安は、傷病手当金、労災、失業保険といった制度を活用することで解消していきましょう!
また、「とにかく今の会社が嫌だ……」という種類の鬱なら、職場環境を変えるのも選択肢の1つです。
新たな可能性を見つけようとしているときは、前向きになれますからね。
たとえば市場価値を無料診断できるMIIDAS(ミーダス)や、転職成功率No.1のリクナビNEXTを利用すれば、今の会社の他にも選択肢があることに気づくでしょう。
また、転職先をじっくり探したいなら、転職のスペシャリストがキャリアアップを手伝ってくれるレバテックキャリアもおすすめです。
体の調子が良くないときは、無理せず休むか、休職・退職を検討すること。
環境を変える元気があるなら、自分にとってベストな職場を見つけてくださいね。
ミラクリから一言
元気になったら、また働こう。