人間関係

「目には目を、歯には歯を」の意味を知ると、少しだけ優しくなれる。

 

心ない言葉を浴びせられて傷ついたとき、咄嗟に相手を殴り返そうと思った。でも「目には目を、歯には歯を」の本当の意味が”やられたらやり返せ”ではないことを知って、妙に心が落ち着いて、優しくなれたのだ。

その日は取引先との打ち合わせで出かけていた。

 

締め切りがたて込み、前日の夜遅くまで「あぁでもない、こぉでもない…」と言いながら原稿を書き続けていたこともあって、ぼやぁっと目覚めてしまった。ぼくは朝目覚めることが怖くなるときがある。もともと根っからのポジティブという性格ではないため、寝起きが悪いと、良くないことが起こりそうな予感がしてしまうのだ。「予感はあたる」というよりも、自分が勝手に描いた悪いイメージが、良くないことを引き寄せてしまうのだろう。

 

自分が本気で願った目標に対して、必要な情報や人が次々と引き寄せられる現象を「引き寄せの法則」と言うらしいが、オカルト的な現象ではないと思う。「今日は良いことがあるぞ!」と思えば、目の前の情報がすべてポジティブになるし、クレームや厳しい指摘ですら「こんな率直な意見はありがたい!」と思える。逆に「今日は良くないことがありそうだ…」と思っていれば、仲がいい同僚の些細な一言に傷ついてしまい、上司からの厳しいセリフに絶望してしまう、ただそれだけの話ではないか。

 

誰しも悪いことなんか引き寄せたくはないハズなのに、幸せになってはいけない、楽をしてはいけない、人よりも前に出てはいけない、人間の無意識には幸せに抗うプログラムがプリインストールされているような気がする。

 

さて、取引先との打ち合わせで外出した日。

嫌なものを見かけた。きっかけは「インターネット」だ。もう何年もブログ・SNSで情報発信していて、それなりに人が集まってくると、ときには辛辣なコメントをもらったり、盛大に批判されることもあるが、時間とは偉大なもので、少しずつ耐性がついてくる。今となっては文章を書く仕事をしていることもあって、どんなコメントをもらったとしても仕事の材料として次に生かせる。もちろん気持ちのいいものではないけれど、「読者が何を考えているのか?」「自分と自分の作品は人の目にどう映っているのか?」を研究して次のネタを探っていく。つい先日は「ナルシストアカウント」と言われて、ちょっと笑ってしまった。

 

でもこの日はちがった。

 

理由は分からないけれど、心からガラガラという音が聞こえてきそうなほど重く受け止めてしまい、しばらく言葉を失くした。取引先と原稿ネタの打ち合わせをしているのに、担当編集者の質問に対して、歯切れの悪い返答をしてしまい、最後には何も返せなくなってしまった。そのとき飲んでいたのはホットコーヒー、すぐにアイスコーヒーを注文しなおすと、まるで準備されていたかのようにすぐにテーブルに置かれた。肌寒くなってきた秋の季節から抗うように、これでもか!というぐらい自己主張した氷のおかげで、すぐに体と頭が冷えて冷静になった。

 

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誰しも自分が打ち込んできた仕事を評価されるとき、イメージ通りの評価を得られなければ落ち込むことになるだろう。ぼくは一瞬だけ落ち込むものの、立ち直りは早い。実力不足への絶望、やるせなさ、自分への怒り、色んな感情が一瞬で湧き上がってくるけど、一晩寝たらきれいに忘れて走りだす。いや、嘘だ。忘れることはないけれど、ここで立ち止まっていては余計に傷が深くなることを心のどこかで理解し、複雑な感情を振り払うようにして、またゆっくりと歩き出す。

 

お金をもらっている以上、仕事で評価されるのは当たり前。厳しい評価を受けたとすれば、それはクライアントや読者のせいではなく、一切の言い訳ができないぐらい自分の責任だ。もっとクライアントの要望を汲み取れたかもしれない、もっとより良いネタがあったかもしれない、もっと早く正確に仕上げることができたのかもしれない。そんな後悔が襲ってくるけれど、悔いてもしかたがないと思って、大好きなハニードーナツを食べて心を落ち着かせる。

 

仕事において一番つらいのは、実は「結果」よりも「プロセス」を否定されることではないだろうか。

 

それまで汗を流してやってきたプロセスの先に、数字という「結果」がある。もっと生産的に仕事ができたのかもしれないし、サボったことで勝負に負けることもある。会社組織で働いていれば、他部署がうまく機能してくれなかった、上司に足止めを食らった、そんな言い訳をしたくなるものだけど、相手を叱ってでも積極的に働きかけなかった自分の責任でもある。「結果」に対しても他責にしてしまうのはプロとは言えない。

 

しかし「プロセス」を否定されるのはキツい。

 

真横で見ている上司から「お前は怠惰だ」と言われるのならまだ分かる。それでも人知れず残業をしたり、悔しすぎて涙したり、休日に家に持ち帰ってこなした仕事もあるだろう。決して褒められたことではないし、生産性の低さを指摘されたらそれまでだけど、プライベートの時間を削ってでも、「犠牲」にしてでも、その仕事に懸けていたということでもある。結果を責められるのはしょうがない。しかしそのプロセスを心ない言葉で否定されるのは本当にキツい。

 

最初に話を戻すと、インターネットで投げつけられたのは「あなたなんかよりも私のほうが頑張ってるし、苦労している」というセリフだった。

 

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「あなたなんかよりも私のほうが頑張ってるし、苦労している」という言葉が、心にかさぶたを残して、2週間ほど消えなかった。ぼくは13年間会社員をやってきて、理不尽なことや、ときには損害賠償もののクレーム処理を弁護士同席で行う苦い体験もあった。それなりにメンタルを鍛えてきたつもりだったのに、最後にはうつ病になって会社を辞めてフリーランスになった。

 

35歳にしてはメンタルが柔らかすぎるのかもしれないと今では思う。

 

ぼくの仕事量や、それだけに賭けてきた時間、犠牲にしてきたものなんか、会ったこともない人に見えるはずがない。SNS・ブログでおちゃらけているからといって、楽してお金を稼いでるわけではないし、ブログを書いているのも遊びであり、将来につなげるための仕事だ。楽をしているかのように感じさせる何かが自分にもあったのだろうが、そのときは感情的になって、コメントした人のことを許せなかった。

 

すぐにブロックしようかとも思った。いや、余計に騒がれたら面倒だから相手にはバレないミュートにしようか。いや、それでは気が済まない。「あなたに何が分かる!!」と言い返そうか、あれこれ悩みながら、しばらく時間が経つと腹を立てている人に対して、これほどのエネルギーと時間を使っている自分が馬鹿らしくなり、iPhoneからそっとアプリを削除した。

 

「目には目を、歯には歯を」という言葉がある。

 

ハンムラビ法典にでてくる有名な言葉で、現代では「自分が害を受けたら、それと同じようにして復讐をすること」という意味合いで使われることが多く、つまりは”やられたらやり返せ”ということだ。

 

今まで生きてきて、人に対して「やり返してやろう!」と思ったことは一度や二度の話ではなく、100回や200回の話でもないだろうけど、その気持ちはなんとかして心にしまってきた。いや、抑えきれなかったことも沢山ある。でも、とくに今回は悪意あるコメントを浴びせてきた人を許せず、復讐してやろうかとも思った。その人がしてきた苦労については知る由もないけれど、否定される筋合いはない。「こんなときこそ、目には目を、歯には歯をだ!」と。

 

でもぐっとこらえた。

そして心が落ち着いてから調べてみると、真相は意外なものだった。

 

「目には目を、歯には歯を」は、”やられたらやり返せ”という意味ではないらしい。そもそもハンムラビ法典とは、過剰な報復を止めるため、復讐の連鎖を抑制するための法律であり、「犯した罪は必ず自分に返ってくる」という戒めのニュアンスであることが分かった。

 

そうか。

ここで自分が相手を殴り返してしまうことは、復讐の螺旋に足を踏み入れることになるのか。そして踏み入れた沼は深く、きっと抜けだせなくなる。わざわざ相手がハマっている沼まで降りて行き、不毛な泥仕合を演じる必要などない。そしてあの人が犯した罪は必ず本人に返ってくる。そして返ってくるかどうかも自分には関係のないことだ。

 

そう解釈できてからは、心がスッと楽になった。

 

小さなことで感情的になるのは大人として未熟かもしれない。でも、いろんな思いを抱えながらも、明日の朝目覚めたときには「今日は良いことがあるぞ!」と感じられる日にしたい。誰かを羨んだり、誰かの足を引っ張ったり、ましては粘着して攻撃し続ける人生にはしたくない。もっとしなやかで、軽快で、希望があるものにしていきたいのだ。

 

復讐の気持ちは、今日消えた。

「目には目を、歯には歯を」その本当の意味を知ることができた、それで十分だった。

 

*メンタルは健やかでありたいものです。

参考:「嫌われる勇気」を教えてくれた秋元康氏の名言

参考:インターネット上の出会いは楽しく、別れはシンプルに。

参考:「気持ちに余裕がない→他人を攻撃したくなる病」を解決してみた。

参考:うつ病を克服した1年後の気持ちと体験談

 

ミラクリから一言

やっとすっきりしましたーー!

トシノリ
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