小林敏徳のコラム

あなたと私は、完全に「違う世界」を生きている

これほどまでに人の見る景色は違うのか。

そう思わされる出来事があった。

「犬猿の仲」で知られる2人の男

駅から歩いて会社に向かっている。約15分の距離だ。

隣には佐伯という男がいる。駅でたまたま会い、なんとなくの流れで一緒に歩くことになった。

話題はもっぱら安西という男についてだ。佐伯と安西は「犬猿の仲」で知られるが、どちらかと言うと、佐伯が一方的に安西を嫌っていた。

安西はクールで、誰に好かれようが嫌われようが気にしない。きっとそのスタンスも、佐伯からすると「すかしてる」だったのだろう。

「安西さんってマジで点数稼ぎがうまいよな」

会社の前にある横断歩道まできた。信号は赤。高速道路の入口の直前にあるその信号は、歩行者にはストレスでしかないほど長かった。

しかたない。待つか。

そのとき会社の前にいる安西を、隣りにいる佐伯が見つけた。

安西は会社の前でゴミを拾っていた。安西が毎日、会社の周りを自主的に掃除しているのは聞いていたが、見るのは初めてだった。おそらく、いつもはもっと早い時間に掃除をし、ぼくらが出社する頃には何事もなかったかのように仕事をしているのだろう。

「すごいな、安西さん」

心のなかでそうつぶやいたとき、佐伯が「安西さんってマジで点数稼ぎがうまいよな」と吐き捨てるように言った。

ぼくは何も言えなかった。

イベント事業で、数千万円の損失を出した女性経営者

別の日、ぼくは知り合いの経営者と飲んでいた。女性である。

彼女は大好きなウーロンハイを頼み、ぼくはコーラを飲んでいる。

どうやらイベント事業が大失敗に終わったらしく、数千万円の損失を出したそうだ。ぼくからすると途方もない金額だが、彼女は意外にケロッとしている。いや、そうとも言い切れないか。こころなしか、ウーロンハイのペースが早い。

15分前に頼んだちゃんこ鍋がくる頃、2杯目のウーロンハイを飲みほした彼女は言った。

「ある意味成功だね」

「ある意味成功だね」

意味がわからない。ある意味成功? ポジティブに考えようとしているのはわかるが、何が成功なのか。

「正直、このイベントは乗り気じゃなかったんだけど、取引先にのせられてGOを出した。うん、わかってる。言い訳だってわかってるよ。経営者としては失格だよ。でも言わせて。今回の失敗でわかったことがあるから、ある意味成功だって」

「その”わかったこと”ってなに?」

「心がムズムズする、なんというか、違和感かな? あれを無視しちゃいけない」

ぼくは何も言えなかった。

あなたと私は、完全に「違う世界」を生きている

会社の同僚だった佐伯は、自主的にゴミを拾う安西に「点数稼ぎ」と言った。

知人の女性経営者は、数千万円にのぼる損失を「ある意味成功」と言った。

人と人が同じ現実を見ていて、同じ解釈を持っている? とんでもない。

それぞれが、まったく別の世界を生きているのだ。

誰かにとっての「いじめ」が、誰かにとっての「じゃれあい」であるように。

あなたと私は、完全に「違う世界」を生きている。

ミラクリから一言

「違う前提」ってマジ大切。

トシノリ
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