小林敏徳のコラム

人に向けた刃は、より鋭くなって返ってくる説

2年間、心に引っかかっていた話

考えさせられる話を聞いた。

定期的に連絡をくれる、焼酎が大好きな営業マンから聞いた話だ。

繊維関係の営業をしていて、たくさんの客先を訪問する彼は、2年前から心に引っかかっていた出来事があるそうだ。

彼のことは、仮に佐藤としよう。

最初は順調だった彼との取引

その出来事は、ある客先で起こった。

担当者は男性で、名は山中(仮名)という。仕入課に所属し、当時は「○○といえば、あの人」と言われるほど評判だったらしい。

だが、営業マンからの評判は別だ。仕入課といえば、各メーカーの営業マンからすれば手強い交渉相手だからだ。

佐藤は山中のもとへ出向き、商談をはじめた。

最初は順調だった。すぐに取引が決まり、佐藤の会社の主力商品である生地を、大量に仕入れてもらえることになった。

問題が起こったのは、1年後が経った頃だ。

理由がわからない、彼の不機嫌

佐藤は、今でも理由がわからないらしい。

その日は、山中の機嫌が悪かった。商談に出てくるなり、どかっと座って、「で?」と言ったそうだ。

おかしい。前回の商談は和やかで、先週は一緒に飲みにも行ったのに、なぜだ?

飲み会で粗相はしていないはずだし、商品のクレームもない。

佐藤は山中の態度に困惑しつつも商談を進め、いちおう何事もなく終わった。

会社に帰ってメールをチェックすると、今日紹介した新しい生地について、山中から質問のメールが届いていた。

突然かかってきた怒りの電話

佐藤はすぐに返信した。

いつもなら16:00以降のメールは翌日回しにするのだが、今日は即レスするに越したことはない。そう判断した。

文面を何度か確認してから送信。

ホッと一息ついたところで、突然、山中から電話がかかってきた。

佐藤が電話にでると、山中は開口一番「あなたはなってない」と言った。

佐藤はすぐに状況を理解し、「たいへん申し訳ありません。本日の商談や、先ほどのメールに、何か不備がありましたでしょうか?」と聞くと、山中は「そうじゃない!あなたはなってない!」と言った。

怒りの原因に心当たりはなかったが、とにかく激しく怒っているのは間違いない。

佐藤はとにかく平謝りして電話を切り、翌日謝罪に向かった。

あの怒りはどこへいった?

オフィスを尋ねると、山中は昨日とは別人のような笑顔で現れた。

困惑する佐藤をよそに、「昨日はごめんね〜。でも君のためを思ってのことだから」と言った。

あいかわらず山中の怒りの原因ははっきりせず、佐藤は「ありがとうございます」と言うしかなかった。

一体、何だったのか。

どこにもぶつけられない衝動と、うまく消化できない気持ちで、佐藤は押しつぶされそうになった。

せめて理由さえわかれば改善できるし、うまく対応もできるのに。

相手の怒りの原因を察することができない自分が悪いのだろうか。

佐藤の悩みはしばらく続いた。

2年後に聞いた、彼の噂

2年後、佐藤はすっかり疎遠になった山中の噂を聞いた。

取引はあいかわらず続いていたが、山中は担当から外れ、今は別の担当者とやり取りしている。

山中に関する噂はこうだ。

「気分屋の山中さんは、ある仕入先にひどいことをして、仕入課を外されたらしい」

どうやら山中が例によって機嫌の悪い日に、ある仕入先にひどいことを言ったそうだ。

「あなたはなってない」

「企画のやり方がわかってない」

「そんなこともわからないの?」

仕入先の担当者は、謙虚に話を聞いてその場を去った。

今まではそれで済んでいたが、今回は違った。

周りの人間が一部始終を見ていて、ついに問題視されたのだ。

山中は社長から「なってないのは、あなたです」と言われ、表に立つことを禁止された。

「あなたはなってない」が自分自身に返ってきた

奇しくも、山中が立場を追われる原因になった言葉は、佐藤にも言った「あなたはなってない」だった。

誰かに刃を向ける姿を、人はちゃんと見ている。

「誰も見てない」と思っているのは自分だけで、実はちゃんと見られている。

そしてその刃は、時間をかけて自分に返ってくる。

より鋭くなって。

ミラクリから一言

ネット用語でいう、ブーメラン。

トシノリ
今日もtwitterでつぶやいてます。最新のつぶやきはこちらをCLICK!!

-小林敏徳のコラム

Copyright© ミラクリ , 2020 All Rights Reserved Powered by STINGER.