小林敏徳のコラム

なぜ、あの人の失礼発言は「笑い」になるのか?

なぜ、彼女は人付き合いがうまいのか?

ぼくは彼女を観察している。

えりこという名の女性を、しばらく観察している。決して気付かれないように。

恋愛感情があるわけではない。ただ、えりこの言動には不可解なところが沢山あるのだ。

なぜ、あれほど人とうまくやれるのか? 「ややこしい」と評判の人とも仲良くできるのか?

もともと人間関係が得意ではないぼくは、えりこをまったく理解できずにいた。

「部長、全然おもろないですね!」

決定的だったのは、3日前の会議でのこと。

いつものように、くだらない冗談で場を締めようとする井川部長に向かって、えりこは「部長、全然おもろないですね!」と言った。

みんなはまだキョトンとしていたが、ぼくは内心震えた。井川部長は、くだらない冗談を「くだらない」と言われるのが最も嫌いだからだ。

それなのにどうだろう。井川部長は怒るどころか、「せやな。すまん、すまん」と笑った。何事もなかったかのように、いや、逆に空気がほぐれて会議は終わった。

どういうことだ。普通なら怒るところだろう。もしくは引きつった顔で「うるさいわ」と言って終わるところだ。

それなのになぜ怒らない。えりこの「全然おもろないですね!」と、他の「全然おもろないですね!」は何が違うのだ?

井川部長はえりこを気に入っているのか? もしかして不倫関係だったり?

邪推も交えながら考えたが、答えはでなかった。

夜遅く、新大阪の居酒屋にて

ぼくとえりこは、それなりに仲がいい。二人で飲みに行ったことはないが、ぼくの思い込みでなければ、行けそうな間柄ではある。

聞きたいことが沢山あるから誘おうかとも思ったが、なにぶん人間関係が不得手で、女性は輪をかけて苦手だから、声をかけることはできなかった。

だが、運良く二人で話す機会があった。

夜の新幹線で大阪に帰ったときのこと。

夜遅くなったから、上司と、ぼくと、えりこの三人で食事をすることになった。

新大阪駅から自宅までの距離の関係で、上司は21:30に店を出た。1万円を古びたテーブルに置いて、「あとは二人で割って」と言われた。

えりこさんは、なぜ、人付き合いが上手なの?

さぁ、ここからである。

勇気を出して、えりこに聞いてみた。

「えりこさんは、なぜ、人付き合いが上手なの?」と。

前置きゼロの質問にえりこは面食らっていたが、15秒ほどで、質問の意味を理解したようだった。

いつもの調子で「全然上手ちゃうよ〜〜」と言い、好物のきゅうりの浅漬けを食べた。

ここで負けるわけにはいかない。

「いや、ぼくから見たら信じられないぐらい上手やねん。この前の会議もそう。井川部長にあんなこと言えるの、えりこさんぐらいやで!」

えりこの動きが止まった。

そして「そうかな〜〜?」とおどけて、そっと箸をおいた。

強いて言うなら、シャッターを下ろしてるからちゃう?

「強いて言うなら、シャッターを下ろしてるからちゃう?」

あまりにもすっぽり間が抜けた返答に、みぞおちのあたりがドスンとして、すぐには返答できなかった。

シャッターを下ろしているから? どういうこと?

あれだけ人付き合いが上手なのに? 完全なる人たらしなのに? 心を開いてないってこと?

わからない。

こちらの様子を察したえりこは続けた。

苦手な人と心を通わせないために

「いや私って、実は人によって心のシャッターを下ろしてるねん。だって苦手な人もいるやん?嫌なヤツもいるやん?みんなに平等でいるのは無理やから、苦手な人とは心を通わせないように、ブロックしてるねん」

わかるようなわからないような…だったぼくは、さらに聞いてみた。

「ってことは、井川部長は苦手ってこと?」

えりこは笑って、またきゅうりの浅漬けを食べ始めた。

「じゃあ、ぼくのことは?」も聞いてみたかったが、ぐっと飲み込んで会話をやめた。

ぼくは上司の1万円と一緒に、5,680円を払った。

えりこから金はもらわなかった。

えりこの説明を理解したのは、しばらく経ってからだった。

人付き合いに関する、自分なりの工夫

「人付き合いがうまい」と言われる人がいる。

そんな人は、みんなに心を開き、みんなと平等に接しているイメージがある。

本当にそうできる超人的な人たらしも存在するが、自分なりに工夫して社交の幅を広げた人もいる。

えりこはおそらく、おそらくだが、もともと人付き合いが得意な方ではない。

自分なりに考え、多くの人とうまくやれる可能性の高いやり方を見出したのだろう。

心のシャッターを下ろし、居心地のいいスペースを守る

そのベースになるのが、「心のシャッターを下ろす」だ。

シャッターを下ろしているから、人に期待しないで済む。

シャッターを下ろしているから、客観的でいられる。

シャッターを下ろしているから、いざとなれば逃げられる。

彼女なりに、居心地のいいスペースをしっかり守っているのだ。

居心地のいい範囲を見極め、そのためにどうするか

好かれたい、社交的になりたい、話がうまくなりたい、笑顔が素敵になりたい、好き嫌いをなくしたい、誰とでも仲良くできるようになりたい、交友関係を広げたい、キラキラした人種に自分もなりたい、インスタ映えしたい。

人間関係に関する願望は無数にあるが、それでもひとつの方向性に向かっている気がする。

「多くに好かれる人間でなければならない」だ。

それを逆にすると、「社交的でなく、交友関係も狭い自分は無価値だ」になる。

決してそうではない。

大切なのは工夫であって、数や広さではない。

居心地のいい範囲を見極め、そのためにどうするかだ。

ミラクリから一言

人付き合い上手は、工夫上手。

トシノリ
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