小林敏徳のコラム

人に好かれるのは、驚くほど簡単だ

古い友人が、友達を連れてきた

古い友人と飯を食うことになった。

もう何年ぶりだろうか。よく一緒に仕事をした彼は、今は自分の会社を経営している。話したいことは沢山あるから、とりあえず「あの焼肉屋」で、木曜日の19時に待ち合わせすることになった。

火曜日。

彼から連絡がきた。「最近仲良くしている女性を紹介したい」らしく、どうやら”仲良くしている”には含みがありそうだが、まぁいい。あいつのことだ。きっと素敵な女性に違いない。

そして木曜日がきた。

懐かしい焼肉屋で、和やかな雰囲気で

彼女は素敵な女性だった。どちらかと言うと「元気のいいタイプ」で、初対面とは思えないほどフレンドリーにしてくれた。

よかった。もし嫌な人だったらどうしよう…という不安が少なからずあったからだ。

彼はビールを、女性はハイボールを、ぼくはラムネを注文して、美しく盛られた肉を焼き始めた。

あいかわらず艷やかな肉をだすその焼肉屋には、徹夜の毎日だった頃によく来た。

「せめて肉を食べないと体が持たない」

そんな思いから二人でよく通った。

美味しさと、懐かしさと、刺激と。言葉にならない気持ちを持ちながら、勢いよく肉をほおばった。

変わった野菜を食べたとき、空気が変わった

ここで空気が変わる。

野菜の盛り合わせが出てきたときのことだ。

その焼肉屋は、店主のこだわりで、一般的にはあまり知られていない野菜を出す。ヨーロッパや南米から仕入れた、初めて見る野菜を口に入れるたびに、ぼくと友人は感動したものだ。

今回のメインの野菜はイタリア産。野菜の名前は知らないし、聞くつもりもなかったが、高級フレンチの前菜に添えてあるような、美しく、それでいて目立ちすぎない株のようなものだった。

さっそく焼いてみよう。さっと炙って、みんなで食べた。

なるほど。たんぱくではあるが、口の中に充満した肉の脂を、やさしく和らげてくれた。

「この店、あいかわらずだな〜」

友人とそう笑ってラムネを飲みかけたとき、友人の連れの女性が「まっず〜〜〜!!」と笑いながら言った。

それからは怒涛のよう。

得体のしれない野菜を出すのはおかしい、そもそも野菜嫌い、株って過大評価されてない?、野菜を焼く人の気が知れない、シャキシャキしたものが苦手、味しない、ハイボールで流し込みたい、吐きそう、代わりに食べて、私はもういらない、お皿にのせないで。

ぼくたちの焼肉屋は、すっかり別の店になってしまった。

モヤモヤは、結局、晴れなかった

その後、友人がその女性とどうなったかは聞いてない。何も報告がないところを見ると、もう別れたのか。

言えなかった。”仲良くしている”のだから、とても言えなかった。

ずっと心に残ったモヤモヤを晴らすために、1ヶ月経ってから1人であの焼肉屋に行った。

ネギ塩タン、熟成ハラミ、ロースステーキと一緒に、もう一度野菜の盛り合わせを頼んだ。

肉はあいかわらず美味しい。ネギ塩タンはそのまま口に放り込むべきだし、熟成ハラミはあえて塩で食べるべきだし、ロースステーキは特製ダレをドバっとかけるべきである。

さて、野菜だ。

あのイタリア産の株らしき野菜がある。

あの時と同じように、さっと炙って食べてみた。

もう味はしなかった。

嫌われたければ、「相手の好きなものをけなせばいい」

この記事のタイトルは、この出来事を真逆から見たものである。

人に嫌われるのは簡単だ、と聞いたことがある。

誰に聞いたかは忘れたが、いわく、人に嫌われたければ「相手の好きなものをけなせばいい」そうだ。

よくわかる。美味しいと思ったものを目の前でゴミ箱に捨てられたら、どう思うだろうか?

これまでの関係性はどうあれ、嫌いになるか、少なくとも気持ちは冷めるのではないだろうか。

「表現の自由」を振りかざす人や、「言いたいことを言う」を信条とする人の多い時代だからこそ、配慮は貴重だ。

「ひとこと言ってやろう」というツッコミ文化の時代

インターネットを使うようになってから、ぼくたちは平気で人に石を投げる人の多さに驚いたはずだ。

人の考えを否定し、好きなものをけなし、思い込みやデマの入り混じった暴言を吐く。そんな光景を何度も目にした。

おかしい。自分の周りにこんな人はいない。もちろん嫌な人はどこにでもいるけど、これほどひどい人はいない。

みんな社会生活では何かしらのお面をかぶって、普通の社会人を演じているのだろうか。時折怖くなる。

「ひとこと言ってやろう」というツッコミ文化が確実に形成されている。

褒める、尊重する、黙る、それだけで変わる

では、「相手が好きなものを褒めればいい」で全部解決かというと、そう単純ではないこともわかっている。

人と人の信頼関係は時間によって育まれる面が多分にあるからだ。

それでも「けなす」よりはましだ。

人の好きなものに共感できなければ、せめて、その愛する姿勢を褒める。

人の考えに同意できなければ、せめて、そのスタンスを尊重する。

どちらもできなければ、せめて、黙る。

それだけで人間関係はずいぶん変わる。

根拠はないが、確信している。

ミラクリから一言

褒める、尊重する、黙る。

トシノリ
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