小林敏徳のコラム

「自分の見せ方が下手な人」を、そろそろちゃんと見ようじゃないか

顔の見えない女性が抱える生きづらさ

朝起きて、いつものようにスマホを開くと、メッセージが届いていた。

いつからか、彼女はよくメッセージをくれる。会ったこともないその女性は、仕事で悩み、恋愛で悩み、決して少なくない生きづらさを抱えているようだった。

詳しい事情は知らない。アイコンは猫だから、顔は知らないし、名前も知らない。彼女の文章を読みながら状況や気持ちを想像し、伝えられることがあれば伝えるしかなかった。

彼女は気まぐれである。あるとき怒涛のようにメッセージが来たかと思えば、それに返信したら、数日は音沙汰がなくなる。なぜかぼくのほうが、彼女の毎日が気になりだしていた。今日はちゃんと朝起きられたのか、あの仕事はうまくいったのかと。

多くを持っているのに、何が不満なのか

彼女の素性は知らないが、送られてくる文章や悩みの種類から、それなりに名の知られる人物だと察しはついた。

年収はかるく平均を越え、著名人の集まる催しに参加し、高層マンションに住んでいる。おそらく本も出版している。文章の端々にそうとわかることが書いてあるだけで、自慢する素振りはまったくない。おそらく人間的にもできているのだろう。

そんな彼女が、なぜ人知れずSNSをやっているのか。最初は理由がわからなかったが、何度かやり取りするうちに、少しずつわかってきた。

今の彼女の人生が、彼女の求めるそれとは全く違うのだ。

華やかな人物像と、薄暗い文章のギャップ

「何が不満なの?」と、珍しくぼくから質問してみた。

答えは「わからない」だった。

多くの人が望むものをほとんど持っていて、地位や名声もある。はたからみれば人生を謳歌しているようにしか見えないのに、何が不満なのだ。詳しくはわからないが、理想と現実にギャップがあるのは確かだ。

想像する彼女の人物像は疑いようもなく華やかで、この目で見た彼女の文章は薄暗い。

その振れ幅に心が揺さぶられた。

「あなたが思う、私の魅力を教えてほしい」

ある朝、また彼女からメッセージがきた。

「あなたが思う、私の魅力を教えてほしい」

そう言われて困った。かなり困ったが、「ほうっておいてはいけない」と直感が言った。

彼女の魅力? なんだろう? 名前も顔も人間性もよくわからないのに、魅力を伝える?

2日ほど考えて、ぼくは彼女がSNSに投稿した言葉で、心にきたものを送ることにした。

彼女はとても喜んだ。ときに恥ずかしがった。激しく落ち込んだりもした。

最初は余計に彼女を不安定にさせるような気がして、やめようかと思ったが、やはり続けたほうがいいとやはり直感が言った。

そのうち返信はこなくなったが、ぼくは彼女に、彼女の言葉を送り続けた。

もしかしたら余計に追い詰めたかもしれない。でも続けたほうがいい、なんとなく。

あいかわらず返信はない。

人の「見える部分」と「見えない部分」

人には、見える部分と、見えない部分がある。

たとえば、こんな経験はないだろうか?

裏表がないと思っていた人のブログや裏アカを発見したとき、あまりのギャップに驚いたことが。社会的な顔や振る舞いは「見える部分」で、素性を伏せて書き綴ることは「見えない部分」だ。

SNSを使い始めてから、ぼくたちは自分も含めた人々の表と裏を、嫌というほど見てきたのではないだろうか。

それなのに、「見える部分」だけで人を判断する癖はなかなか抜けない。

目には見えない部分に詰まっているもの

多くを持っているのが豊かではないし、持っていないのが貧しいわけでもない。

万事順調が幸せではないし、もがいているのが不幸でもない。

「人は見た目が9割」と言うが、それは初対面の印象の話であって、それ以上でもそれ以下でもない。

目には見えない部分にこそ、その人の大切な何かが詰まっている。

人の見えない部分を見ようとする姿勢

「見せ方のうまい人」は存在する。自己アピールがうまくて、1を10に見せるのが得意な人だ。SNSが得意なのも、このタイプだろう。

その一方で、「見せ方がうまくない人」も存在する。自己アピールが苦手で、10を1にしか見せられない人だ。

後者は損をすることが多い。誰も手を付けないことを人知れず片付けたのに、それを言うのが苦手だから、気づかれもしない。「縁の下の力持ち」にすらなれないのだ。

こうした不均衡は、どこから生まれるのか。

人の見えない部分を見ようとする、その姿勢の欠如ではないか。

人の心の奥に、どう気づくか

わかっている。評価は人がするものだから、「こうやって評価してほしい」なんていうのは戯言だとわかっている。

だからこそ自分自身から、人の見えない部分を見ていきたいし、少なくとも見るように意識したい。

見せ方のうまい人は散々見たし、これだけ情報やノウハウがあふれているのだから、これからも登場するだろう。もうたくさんだ。

「自分の見せ方が下手な人」をどう見ていくかが、もっぱらの課題。

ミラクリから一言

損をしがちな人に光を。

トシノリ
今日もtwitterでつぶやいてます。最新のつぶやきはこちらをCLICK!!

-小林敏徳のコラム

Copyright© ミラクリ , 2020 All Rights Reserved Powered by STINGER.