ミラクリ

鬱から成功するブログ

年収が95%下がった環境で、楽しんで仕事をしている人がいた。

 

元日本代表アスリートの話を聞いたときのこと。

 

一番印象に残っているのは、話の内容よりも彼の「穏やかな表情」だった。

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ぼくが知っていた彼は、鬼のような形相で相手の裏をつき、鋭い走りだしでゴールネットを揺らすアスリート。ゴールを奪ったあとは、自信にあふれた表情で「見たか!!」とばかりにスタンド側に走ってきた。

 

スタンドとスポーツニュースで見る彼は、いつもそんな感じ。

 

それがどうしたことだろうか。あれから10年が経ち、いま目の前にいる彼は穏やかな表情で「楽しい」とくり返している。その言葉にウソはなく、練習を見に行くと笑顔でプレーする彼がそこにいた。

 

チームメイトに積極的に声をかけて、ときには笑顔を交えながらアドバイスをする。練習ゲームでキャプテンマークを巻いた彼は、ひと昔前の”天上天下唯我独尊”の香りが消えて、丁寧にパスを送りながら後方からのアシストに優しく、そして正確に反応する。

 

昔のような鋭さは消えていたけど、ゴールゲッターであることは間違いなかった。

 

Soccer-Ball

 

年齢的に成熟すると「周りが見えるようになる」と言われる。それは「俺が!俺が!」の尖った部分がなくなり、周囲との調和を覚えることだと思う。

 

今の彼はまさにそんな感じ。日本代表まで上り詰めた彼の才能、そして積みあげた鍛錬は疑いようのない事実。そんな彼が今は下部リーグでプレーしているのもまた事実だった。

 

彼は何度も「楽しい」「楽しんでいる」と言った。

 

少し意地悪な見方をして「年齢的な衰えに対する言い訳」「ビッグクラブから下部リーグまで落ちこんだ自分の正当化」かと思っていたが、目の前にいる彼には淀みがない。暗さもなく、当日の曇り空から逆走するように、ぼくの気持ちはどんどん明るくなっていった。

 

意地悪な見方をした自分を恥じた。

ぼくと話している状態がすでに楽しそうだったから。

 

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話が盛り上がってきたところで、これまた意地悪な質問をしてみた。鬼の形相でプレーしていた当時の彼なら、怒って席を立ってしまうかもしれない。でも聞かずにはいられない。勇気を出して聞いた。

 

「今の年俸は、ビッグクラブにいた当時と比べてどうですか?」

 

愚問であることは分かっている。

海外リーグでも活躍した彼は、「日本人アスリート」の物珍しさだけではなく、実績で定位置を獲得。ときに日本人選手の海外移籍は、「試合に出なくてもユニフォームが売れる」ことで”ジャパンマネー”と揶揄されることがある。

 

しかし、彼の評価は実力だった。

チームトップのゴールを稼ぎ、”日本人”としてではなく、”優秀な選手”として評価されている彼に多額のお金が支払われるのは当たり前。緊張しながら質問したぼくに気づいたのか、意外にもあっさりとした答えが返ってきた。

 

「ピークの年俸に比べると95%減だね。ハングリーだろ!?(笑)」

 

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富、名声、自己顕示欲のすべてかなぐり捨て、「これが好きだ!」に向かっていくこと。コレさえできればいい、毎日好きなことに触れていたい、そんな純粋なモチベーションだけで彼は笑い、今も走っている。

 

「堕ちた」「終わった」意地悪な人はそう言うかもしれないが、彼の姿には胸を打つ何かがある。自分が彼だった場合、こびれついた傲慢さが顔をだし、「なんで俺(サマ)がこんな低レベルのチームでプレーしなきゃならないんだ!」などと思ってしまいそうだから。

 

脳内のイメージと目の前の現実が交錯して、”今”を受け入れることができない。ぼくの平凡な人生ですら日常茶飯事なのに、毀誉褒貶の激しい世界はもっと壮絶だろう。

 

ぼくが彼なら空回りする自信は満タンだけど、彼のように楽しめる自信は皆無だ。

 

彼は5年間もの間、コンスタントにゴールすることはおろか、試合に出ることすらままならない日々が続き、出場機会を求めてチームを転々とした。もともとは世界で活躍してきた人だけに、原因の分からない不調に悩み続けた日々があっただろう。

 

「先週なんかさ、学生たちに予約されちゃって、グラウンド使えなかったんだよ。」

 

クラブハウス・専用グラウンドのないチームで、ピーク時のわずか5%の年俸をもらいながらプレーする彼は、そう言うとまた笑った。

 

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きっと「鬼のような形相で戦わざるをえない職場」があり、「穏やかな表情で楽しめる環境」もあるということだろう。

 

あるときは「鬼の形相」でスキルをつけて、お金を稼ぐ。またあるときには「穏やかな表情」で楽しみ、好きなことを追求していく。なんとなく前者のほうが”勝ち組”と言われやすく、後者は”スローライフ”的な何かかもしれない。

 

でも、そんな定義はどうだっていいじゃないか。

 

殺伐とした環境では、乾いた価値観が身につく。表面的なお金や名声が肥大しても、朝起きる瞬間がもっとも苦痛なのであれば、遅かれ早かれメンタルが壊れていくだけだ。

  • 趣味=お金にならないもの
  • 仕事=苦しいけどお金になるもの

この二極論で語られることは多いが、両立可能だと思っている。ぼくはライターの仕事をしているが、朝起きたらすぐに文章を書きたくなるぐらい楽しんでいて、それによって生活が成り立っているからだ。

 

元日本代表アスリートの年俸は、ピーク時と比べて95%減になってはいるが、彼はそんなことを気にしている様子がない。満足できる金額ではないかも知れないが、それを補って余りあるものがそこにあるということだろう。

 

「めちゃくちゃ応援してくれるサポーターのためにも、絶対昇格させたい!」

 

次の公式試合で彼はゴールを決めた。

スポーツニュースでその様子を見たとき、チームメイトにもみくちゃにされている彼の口がわずかに動いたことに気づいて巻き戻してみると、満面の笑みを浮かべながら間違いなくこう言った。

 

「見たか。」

 

昔のように誇らしげな「見たか!!」ではなく、チームメイトへの感謝を伝えるようなささやかなボリュームで放たれた言葉に、なんだか胸が熱くなった。

 

どうせ働くなら、楽しみたい。

全盛期と比べてスピードと年俸を失った彼が、全身の毛穴が開くような熱さでプレーしているように。

 

「違和感」のなかにある大切なモノを信じる力

消費が終わり、感動するものだけが残る時代の仕事

「無条件にカッコいい」その感動からはじめよう。

 

ミラクリから一言

また1年を楽しもう。

 - お金

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